熱海新聞/伊豆新聞/伊豆日日新聞(2014年4月27日)

 私が研修医になったのはもう40年以上も前のことです.その頃の生活は毎朝5時台に家を出て大学病院に出勤し,人工腎臓を組み立てることから始まりました.現在わが国では,31万人を超える人工腎臓を利用しながら生活されておられる方達(透析患者さん)がおられますが,当時は新潟の病院と私の大学病院を中心に全国を合わせても数十人の患者さんがいるだけでした.朝の作業では手作りの人工腎臓(ダイアライザー)を作るのですが時間がかかって患者さんの治療が開始できるのは午前9時から10時頃になります.作った人工腎臓の性能が低くかったので治療時間が12時間もかかり治療の終了は夜の10時頃になりました.治療される患者さんも疲労困憊しましたが,治療装置の後始末を終えて私が家路に就くのは深夜の終電の頃になっていました.実質の睡眠時間が4時間にもならないことがしばしばでした.
 今は工場生産の安全で高性能のダイアライザーの使用によって治療時間は4時間前後に短縮され,わが国の透析治療は世界でも飛び抜けて成績が良いのですが,患者さんが週3回各4時間ずつ治療を受け続けることの負担は大変です.このため私は千葉県の総合病院の院長を勤めていた時に恒久的な透析治療からの離脱を推進するために病院内に臓器移植センターを新設しました.英国のケンブリッジ大学教授で臓器移植の専門医として著名な日本人の方をスカウトしてセンター長として招聘して体制を固めました.そこでは数多くの透析患者さんの腎臓移植を成功させてきました.
 その後事情があって私はその病院を離れましたが,現在の熱海のクリニックは透析や移植は実施しておりませんので,一次予防・二次予防としての腎臓病の内科的治療に力を入れています.徐々に進行する「慢性腎臓病」がわが国の国民病として着目されてきた昨今では,出身大学の先輩が開発した慢性腎臓病の進行防止のためのチームワークによる治療(取手方式)を取り入れた方法を定着できないか,準備をしているところです.

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